弐条海月の とはずがたり

そこはかとなく書き綴るブログなるもの

月に思う…2

 月に関する歌を想う時、浮かんだ歌は百人一首にも選ばれている安倍仲麿の歌

天の原 振り放(さ)け見れば 春日なる 三笠の山に いでし月かも

でした。

 ここに書くまでもなきことですが奈良時代の人、安倍仲麿は遣唐使に同行して留学し、そのまま唐朝の官吏として高官にまでなった人です。日本へ帰る際に船が遭難し帰国を断念、50余年をかの国で過ごし、故郷を思いながら異国に骨を埋めた人です。百人一首に収録されたこの歌は、日本へ
帰ろうとした際の送別会の場で詠んだとされています。

 この歌の「天の原」は広い大空を示し、「振り放(さ)け見れば」はふり仰き遠くを見るという意味。「春日」は奈良県にある春日大社(奈良市春日野町)一帯の呼称で春日野(かすがの)とも。「三笠の山」は、春日大社の後方にある低い山で、御蓋山とも。

 私なりに意訳すれば、こんな感じでしょうか

月明かりの下、空の遥か遠くを望む。

今見ている月はかつて、

春日の三笠山に出ていたあの月と同じかもしれないなぁ?

 送別の縁石で酒を飲み故郷を思い空を見上げた時、かつて旅立ちの無事を祈願した春日大社のことを思い出して詠んだ歌なのでしょうかね。当時の短歌は、異性に思いを伝える恋の歌でもありましたから、別れを惜しんでくれる仲間に歌を披露しつつも、遠い昔の恋の思い出を、それこそ振り
仰いで歌ったのかもしれないですね。

 そんなことを思いながら月を愛でておりました。

 余談をひとつ…うろ覚えだったのですが上の句に「天の原振り放け見れば…」とある歌が万葉集にあったなぁと思い調べてみると「天の原 振り放(さ)け見れば 大君(おおきみ)の 御寿(みいのち)は長く天足らしたり」でした。


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