ぬか吉、参上!
子どもが寝静まった夜のこと。「これ、見てくれない?」と妻が取り出したのは…ぬか床でした(笑)。
私「なんだ? この容器は?」
妻「ぬか吉よ」
私「ぬか吉?」
妻「そう。ぬか漬け用のぬか床。だから、ぬか吉なの」
私「なるほど…安直なネーミングだな。」
妻「別にいいじゃない。午前中に作ったばかりだから、まだ漬かっていないんだけど…」
私「知ってるぞ。最初は捨て野菜を漬けて、ぬか床の発酵を促すのだろう?」
妻「捨て野菜がなかったので、いきなり漬けちゃった(笑)。味見してみる?」
私「まだ漬かっていないだろう。だが、少し気になる…」
妻「でしょ(笑)」
私「そもそも何を漬けたんだ?」
妻「キュウリとニンジンとナス。さぁ、発掘するわよ!」
ここで妻は、ぬか吉を箸で掘り返し始めました。なぜか「となりのトトロ」の曲を口ずさみながら。
そして、私が別のことをしているうちに、妻は発掘した漬け物を一口大に切り分けていたようでした。
私「ひとつ聞くが、なぜトトロの曲なんだ?」
妻「別にいいじゃない。なんかワクワクするでしょ? それより…はい、どうぞ」
差し出された小皿にはニンジンの切れ端が2つ。私はそれを矢継ぎ早に口にして…感想を述べました。
私「確かにまだ漬かっていないが、なかなかウマイじゃないか。これからが楽しみだな」
妻「…あっ、ここにあったニンジンは?」
私「ニンジン? ああ、それなら俺が食べたが」
妻「2切れあったでしょう?」
私「漬け物のキュウリが苦手な俺のために、ニンジンを2切れくれたんじゃなかったのか?」
妻「違うのに~ムキー!」
私「おいおい、そう怒るなよ」
今、この状況下で妻の怒りを静めるための最高の策を考えます。
(よし、これだ。これしかない。)
私は躊躇することなく口ずさんだのです。
30過ぎの男が、夜遅くに、あのトトロの曲を…。
結果は成功。妻は再び何事もなかったかのように発掘を始めました(笑)。
お後がよろしいようで。